旅の思い出5「絵になる風景鳥取砂丘」

山陰旅行⑤

現代に生きる我々にとって、ただの1つも灯りの無い夜を体感する事は難しくなっていると思う。しかしその日、我々の前に広がっていたのは真の闇だった。
まだ夜の明けきらない鳥取砂丘には(当たり前だが)街灯もなく、2メートル先さえ見えない砂の丘を我々は手探りで歩いた。私は夜目が利く方だから夜明け前の空と砂の丘の境を朧げに認識出来たが、鳥目のYには足を前に出す事さえ恐怖だったようだ。Kは闇夜の砂丘がハッキリと見えているかのようにスタスタと砂の丘に登り、黙々と星空を撮り始めている。彼女はきっと、超音波を出す事で目前の障害物を認識しているのだろう…コウモリのように。
そうしている内に、空が白み始めた。そして私はこの旅で最も幻想的な風景に出会った…

鳥取砂丘の夜明け①

昨夜まで荒れていた空には風が吹き払ってくれると信じた雲が立ちこめ、しかし、その雲の隙間から神々しい朝日が差し込んでいる。Kは澄み渡った青空を期待していただけに不満そうだったが、雨にたたられたこの旅で雲間から一瞬見えた太陽の光はただの青空よりも却って美しく私の目に映った。私はこの瞬間、ようやく自分が旅をしているという実感を持てた(…では、今までは何だったんだ?…運転手か?)。

鳥取砂丘の夜明け②

実のところ、私が鳥取砂丘を訪れるのは4度目であった。20年近い昔、まだ学生だった頃に自分の映像作品のロケで3度訪れている。少しづつ光を受けその姿を現す巨大な砂の丘の中に、二十歳そこそこの無軌道な若造だった自分の姿を見ていた。あれから20年経っているのに、この鳥取砂丘までの道程があの頃と同様に無茶なのは納得いかないが…
まあ、学生時代と違って高速道路を利用するようになっただけマシになったのかもしれない(学生の頃は宿にさえ泊まらず車中泊が基本だった)。

鳥取砂丘の夜明け③

夜の闇が消え、巨大な砂の丘の全体像が現れ、学生時代に見た時よりも砂丘全体を小さく感じている自分に気付いた。砂丘は海からの風を受けて少しづつ形を変えていると聞いた。20年近い歳月は不動に思えたこの巨大な丘さえ変えてしまっているのだろう…若者がオッサンに変わるのも無理は無い…
とにかく、撮影旅行にふさわしい絵になる風景に出会えた。ここでカメラを構えるのは4度目だが鳥取砂丘の新たな美を見たような気がして、ただただ懐かしく、嬉しかった。

鳥取砂丘の夜明け④

私は荘厳な風景を目の前にし、心が浄化されていくのを感じた。無論、昨夜の宿の事などすっかり忘れていた。“看板に偽りあり”な風呂場や一般家庭風のベッドの事など…(←忘れてない)
そんな我々の旅も、次が最後の目的地になる。相変わらずどんよりと曇った空の下、我々は鳥取砂丘を後にした…


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