旅の思い出15「朝の境港」

山陰旅行-完結編-④

みぞれに翻弄された夜から一夜明け、いつもだったら夜明け前始動して朝日を狙う我々であったが、昨日からの雲は鳥取県を覆い尽くし晴れる気配も無かったのでこの日の朝は珍しくゆっくりと出来た。ビジネスホテルの窓辺で明けた空を眺め、悠々と顔を洗う…そんな普通の旅先の朝を本当に久しぶりに体験した気がした。心配していた雪も溶けたようで、我々にしては珍しくグルメなスポットに足を運んだ。冬の鳥取と言えば境港の美味しい魚である。

境港の市場①

港に着くと、冬の日本海特有の強い風に煽られた波が防波堤で白波を立て、我々のような能天気な写真バカよりもトレンチコートの襟を立てた女性が独りで歩いている画がしっくりくる、テレビドラマ(サスペンス系)でよく見る風景が眼前に広がっていた。そんな風景以上に私の心を掴んだのは、サスペンス系の風景の中で平然と釣りをする地元の境港っ子たちである。

境港の市場②

山口県から来た我々からすれば海風も合わせて殺人級の寒さなのに、彼等からすれば「今日は温かいね」ぐらいなのだろうか…私もずいぶん長い事眺めていたが、いつまでも同じ場所で釣り糸を垂れていた…恐るべし、境港っ子!(←微妙に語呂が悪い)
殺人級の寒さに耐えられない我々は港の市場に逃げ込んだが、市場では気まずさに耐えられなくなってしまった。冬の境港と言えばなんと言っても松葉ガニである。大きさは他のカニに比べてさほど大きくはないが、その身の旨さは評価の高いカニである。そして明らかに観光客(いつもカメラを携帯している)の我々は、絶好のターゲットである。市場の通りの両側から、いつもの日常では考えられない程、一瞬“モテ期”が到来したのかと勘違いする程声をかけられまくった。私が金持ちに見えたかどうかは定かではないが、貧乏ケチケチ旅行を信条とする我々に松葉ガニなど高嶺の花である…身を切るような寒さから逃げて来た我々は、足早に市場を出るしか無かった。市場を出たすぐ裏手に食堂があり、我々は飛び込むように食堂に入った。境港に来たからには当然新鮮な魚を食べなければならない。私は好物の「マグロの鉄火丼」を注文した。食堂の中は団体客を受け入れる為にか異常に広く、まだ昼前という事もあって我々以外には1組の老夫婦しか居なかった。大きく開いた窓から見えるサスペンス系の風景も相まって、私は涙が出そうになった。何より食べながら気付いたのだが、マグロが上がるのは主に太平洋だったはずで、私は冬の境港まで来て日本海の魚を食べていない…この事実が何より私を涙させた。鉄火丼に添えられた魚のアラのみそ汁は境港の魚を使っているらしく、やはり涙が出る旨さだった。(私だけ)涙に滲んだ境港を後にし、我々は山口への帰路についた…


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