オールドレンズ沼への道8

⑧P.ANGENIEUX RETROFOCUS 28mmF3.5

今回ご紹介するレンズは、クセ玉にして今や高価な部類に入るアンジェニュー3.5/28です。

ゼブラ柄アンジェニューアンジェニューと言えばシネマ用のレンズを製作するメーカーで、スチル用としては今回ご紹介するゼブラ柄のエキザクタ・マウント用レンズが有名です。
「人間が見たままを再現する」コンセプトで設計されたレンズは(ピントが)「甘い」と思わせる程軟調な描写で、中古市場では人気のレンズです。
あまりの人気ぶりに“アンジェニュー”というブランド名で十数万の値が付くレンズも少なくありません。
無論私のような貧乏人がそのような高価なレンズを買えるはずも無く、いつもオークションサイトの中で輝くレンズたちに羨望の眼差しを送るのみでした。
しかし、ある時国内のオークションサイトで異常に安いアンジェニューレンズを見つけ、私の中の“物欲バイヤー”が覚醒してしまいました。
私の中の物欲バイヤーはひとたび覚醒すると“冷静で客観的な自分”を封印し、ハンマープライスに至るまで私の脳を乗っ取る恐ろしい存在です。
…無論、抵抗は出来ません…

“アンジェニューの描写① …不思議とこの時は抗いたいとも思いませんでした。
かくして他のバイヤーとオークション終了ギリギリまで競り、それでもアンジェニューにしては低価格で手に入れる事が出来ました(なんと1万円以下!)。
待ちに待った商品の箱を開け、憧れの“PARIS”の刻印を見た時は純粋に感動した事を覚えています。…こうしてまた、オールドレンズの沼にどっぷりとハマっていくワケです。このレンズで確実に肩まで浸かってしまった感があります…
待望のアンジェニューをカメラに装着し喜び勇んでテスト撮影して驚いたのは、撮れた写真が評判通りの“軟調”な描写に仕上がる事はもちろん、ピントの合っている部分が予想以上にシャープに切り取られている事でした。軟調な描写のレンズはピントが合っている部分も軟調な傾向にあり、拡大しないと合焦している事が分かりにくい物も多いですが、アンジェニューのレンズのスゴイところは合焦点がカミソリで切ったようにシャープで細部をしっかりと描写している点にあります。
それでいて“白飛び”しやすい空を、諧調を残した柔らかい描写で描くところは「流石」の一言に尽きます。今更ながらにフランス映画が描くパリの風景が諧調豊かに表現されていたのはアンジェニューレンズの賜物だった事を思い知りました。

アンジェニューの描写②様々にテスト撮影を重ねて強く感じた事は、軟調のアンジェニューには“マジックアワー”が良く似合う、という事です。
風景を照らしていた太陽が隠れ、空が美しい諧調を出す短い瞬間を切り取るのにこれほど相応しいレンズは無いと思います。
名カメラマンとは言えない私が撮っても、撮れた写真を“作品”に変える力がそこにあると思います。
(私にしては珍しく)良い買い物だったと私の中の“物欲バイヤー”を褒めてやりたい気持ちですが、あまり褒めると私が破産するまで暴走を止めない気もするのでやめておきましょう…
…もうすでにオールドレンズ沼からは抜けれない程深く浸かってしまっている気がするので…

今回使用したマウントアダプターはコチラです。




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