旅の思い出32「名建築・地中美術館❷」

瀬戸内国際芸術祭③

入場券を買う為の整理券を脅威のダッシュで手に入れた我々は、ようやく地中美術館に向かう事が出来た。驚いた事にバスが着いたのは地中美術館の券売所(インフォメーションセンター)であり、美術館では無かったのだ。私は文字通り“地中”にある美術館だと(勝手に)信じていたので、SF映画の地下基地のように専用エレベーターで地中深く降りて行くのだろうと勝手な想像をしていた。私は(いたって真面目に)地下への通路を券売所のお姉さんに聞いたのだが、美術館は少し歩いた先にあると呆れ気味に答えられた。

地中美術館①門の前

言われるがままに入場券を持って美術館の門の前まで歩き、我々より先に入場券を買って開館を待っている人々に合流し、我々より後に入場券を買った人達も合流し始めると整理券の“順番”の意味が消失しているような気がしてならなかった。メンバーKとYのダッシュは徒労に終わったようだ。私個人は何よりも楽しみにしていた「地下基地」が想像と違っていた事を残念に思っていた。世界的な建築家の安藤忠雄が設計した、サンダーバードのような「地下基地」を見てみたいと考えていたからだ。…まあ、常識的に考えてサンダーバードのような地下基地を作れるはずも無いし、作る意味も無い気もするが。

地中美術館②内部通路

開館時間の10時になり門が開くと皆一斉に美術館に向かった。中には小走りで美術館に向かう人もいて、いよいよ整理券の“順番”の意味は無くなり、私はどこか煮え切らない気持ちのまま美術館に入った。中に入って驚いたのは、美術館の内も外もコンクリートで作られているのに全体的に明るい印象を受けた事だ。それでいて影はどこまでも暗く、おそらく計算された光の取り込み方で見事な光と影のコントラストが演出されていた。この地中美術館そのものが見事な作品なのだと感じた。吹き抜けから見える青空はどこまでも青く、無機質なコンクリートとの対比も見事だった。

地中美術館③吹き抜け

美術館の内部を歩き回って驚いたのは、展示スペース以外の通路には勾配が多く気が付くと坂を上ったり降りたりしていた事だ。この地中美術館は小高い山をくり抜くように作られており、我々は“安藤マジック”で気付かぬ内に山の頂上付近まで歩かされていたのだ。常設展示作品も、光を作品に取り入れたものが多く、何より驚いたのはクロード・モネの「睡蓮」が展示されていた事だ。晩年の作品という説明だからモネが目の病で光を失いつつある頃のものだろうが、その色彩には驚かされるばかりだ。何よりモネの展示室には人工照明を使わず自然光を巧みに取り込んで作品に照射するというこだわりには、「目で見た光をそのまま描く」事にこだわった印象派の作品を展示するに相応しい方法だと感心させられた。モネを初め常設展示されている作品や美術館の建築自体もそうだが、全てにおいて洗練されていて無駄が無い。久しぶりに美術館に来て面白い体験が出来たと思う。ただ個人的に残念なのは、こういった美術館などの施設に展示されている作品は撮影が許されていない事だ。作品の著作の問題があるので当然と言えば当然なのだが、私にしてみればこの体で感じた感動を記録したいと思ってしまう性分なので不満が募ってしまうのだ。地中美術館内部も撮影は許されていないが通路を歩きながらスマホでこっそり撮影した…スタッフの皆様には申し訳なく思っている次第…
かくして地中美術館を堪能した我々は直島に点在する作品を観て廻る事にした…


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