旅の思い出34「直島の有名人、おっちゃん登場!」

瀬戸内国際芸術祭⑤

カフェ・レストランGardenで半分居眠りしながら食事した我々は少しだけ元気を取り戻し、再びアート巡りに歩き出した。

「はいしゃ」の外観

この本村地区では近所に住む名物おじさんが出没して我々のようなビジターを案内したり世話を焼いてくれると、直島のインフォメーションセンターで貰った手作り風のガイドブックに書かれていて、人見知りのメンバーYとKはあまり反応しなかったが私個人は“おっちゃん”との遭遇をとても楽しみにしていた。
我々が食後すぐに向かったのは、家プロジェクトの1つ「はいしゃ」という作品だ。これは、実際にこの地域で歯科医として開業していた建物をまるごと改修して廃材やオブジェでコラージュした作品で、「洗練」よりは「混沌」という言葉が相応しい作品だ(外観だけ撮影が許可されていた)。この作品の凄い所は、家としての構造を完全に解体せずに、基礎的な造りは残したまま各部屋に「中学生男子」的なテイストをちりばめている所にある。

“おっちゃん”との記念撮影

この「はいしゃ」の前で一際目立つおじさんが目に留まった。その独特の雰囲気を醸すおじさんこそ、手作りガイドブックにあった“おっちゃん”だ。おっちゃんは、ガイドブックにも“おっちゃん”と書かれて本名は明かされてない…つまり我々も「おっちゃん!」と呼ぶしかないのだ…
我々を見つけたおっちゃんはこの「はいしゃ」を撮るアングルやポジションなど細やかに指導してくれ、自身も趣味で写真を撮っていてこの直島にある小さなギャラリーで定期的に写真展を行っていると語ってくれた。私としてはおっちゃんのパーソナルな情報を聞き出したかったのだが、陽気なおっちゃんはほぼ一方的に喋ると「次に行く」と言ってバイクで走り去ってしまった。手作り風ガイドブックによると、おっちゃんはカエルが好きでカエル関連のグッズを趣味で集めて自宅の前に展示しているという…謎の多いおっちゃんである。

護王神社

“おっちゃん”と別れた我々は、町の高台にある「護王神社」に向かった。正規のガイドブックを読むと、この「護王神社」は元々この場所にあった神社を杉本博司氏が設計し直した「作品」なのだ。杉本博司氏といえばニューヨークを拠点に活動する写真家で、NHKでも取り上げられるような著名人である。U2のボノが杉本氏のファンで、U2のジャケットに杉本氏の写真を懇願して使用した事は有名である。…そんな著名な写真家が何故神社の設計を…?疑問は尽きないが、これまで家プロジェクトを観て廻って強く感じた事は、どの作品も「直島」の「本村地区」というこの地域を最大限尊重しているという事だ。大規模なアート・プロジェクトになると、周辺地域を巻き込んでの展示になる事も少なくない。その際にどれだけその

瀬戸内の風景

地域が刻んできた歴史を荒らす事無く作品を作れるかが大切なのだと思う。“おっちゃん”を初め、この地域の住民がこの国際的なアート・イベントに協力的なのは、このイベント全体が島それぞれの歴史を最大限に尊重してきた結果に他ならないと思う。
高台から見える町並みの向こうには穏やかな瀬戸内の海が見えていた。私はいつしか、時間が許す限りこの島に逗留したいと願っていた…と私一人で感傷に浸っていたが、気が付くとメンバーKの機嫌が悪い。聞いてみると、行く先々で猫を期待していたが猫が一向に現れないのが不満らしい。…動物写真家・岩合光昭氏の悪い影響か、瀬戸内には猫がそこら中に居ると思い込んでいたらしい…ネコ写真で有名な岩合氏も、各地域でネコを探しまわったと思うが…
かくして、不満を抱えた「猫ハンター」を含む我々3人の道中は続く…


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