旅の思い出42「豊島との別れ」

瀬戸内国際芸術祭⑬(最終回)

紛失した携帯電話を探す為に消えたメンバーKを待ちながら、私とメンバーYは港の辺りを何となく歩き回った。

フェリーからの夕陽

メンバーKを待つ我々2人は他にする事もなく、ただ海を眺めたり港の写真を撮ったりしていた。その間もメンバーKが脚力の全てを振り絞って自転車で走り回っている事は、何となく想像していた。
そうしている内に、メンバーYの携帯にメンバーKから連絡があり、携帯が見つかった事を知らせてきた(携帯で連絡してきているのだから当たり前だが)。港から道沿いに出てみると、晴れやかな顔で颯爽と自転車を駆るメンバーKの姿が見えた。聞けば、豊島美術館を見下ろせる高台の畑の中に落としていたという…気付くのが遅くなっていたら暗くて見つけられなかっただろう…危機一髪である。我々3人はとにかく胸を撫で下ろした。

フェリーでの帰路

このまま携帯電話が見つからなければ、暗い気持ちのまま帰路を過ごさなければならない所だった。当然の事だが、メンバーKにも安堵の表情が浮かんでいた。
かくして、我々の瀬戸内芸術祭は終わりを告げた。結局2つの島しか巡る事は出来なかったが、限られた日数で、限られた体力で廻れるだけは廻ったように思う。本格的に瀬戸内芸術祭を巡るには日数も資金も不足していた我々は、いつかまた戻ってくる事を誓って帰りのフェリーに乗り込んだ。朝から海全体を包んでいた霧は消え、美しい夕陽が我々を見送ってくれた。フェリーの甲板に出て夕陽を眺めながら、再び仕事に追われる日常が始まる事を憂鬱に感じていた。何より、これから高速道路で山口県まで走破しなければならないと思うと憂鬱を通り越して苦痛さえ感じていた。

宇野のチヌ

岡山県の宇野港に着いた我々を最後に見送ってくれたのは淀川テクニックという2人組が作った「宇野のチヌ」という作品だった。港に流れ着いた漂流物だけで作ったこの巨大な魚に別れを告げ、我々は帰路についた。今日一番自転車で走り回ったであろうメンバーKは、車が動き出すと同時に眠りについた。
こうして我々3人の旅は終わった。この瀬戸内芸術祭を境に我々3人は旅に出ていない…つまり、42回に渡って書き綴った3人旅のシリーズは今回で一旦終了となる。
多少大袈裟に書いた部分もあったが、起こってきた事件に偽りは無い。こうして書きながら振り返ってみて、我ながら波乱に満ちた…という程ではないが中々「山あり谷あり」な旅だったと思う。しかし、山陰に始まり長崎・瀬戸内と巡ってきた我々には新たな計画があった…


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