新たな仕事15「新たな苦い経験」

StudioECHO創業のスタート切るのに相応わしい、山口萩焼のCM動画の制作だったが、映像の撮影を終えた段階で新たな問題に悩まされる事になる…

そもそもこのCMの音楽には、クライアントである山口萩焼大和猛さんの意向で、イーグルス(Eagles)の「デスペラード(Desperado)」を想定していたので、私自身もそのつもりで編集作業を進めていた。

映像編集において、もっとも重要なのはテンポだと私は考える。
映画制作においてもしばしば語られる事だが、音楽と映像の割合は50/50(フィフティー・フィフティー)だと云われている。これは、かつて自主映画を作っていた私自身の経験からも云えることだが、音楽をないがしろにした映像は、作品として“厚み”“深み”も無くしてしまい、ペラペラで希薄なモノになるような気がする。故に、編集においても使用する音楽のテンポや、時には“情感”さえも無視できない。
編集作業と同時進行で「デスペラード(Desperado)」の使用許諾についてJASRACのホームページから手続きの段取りを調べていた。

私が依頼を受けて流す動画はCM(コマーシャル)であり、これは「商用利用」に当たる。
商用利用の場合、JASRACの規定として音楽出版社からの許諾を得た上で、初めてJASRACとの“使用料”の手続きが始まるようで、いささか面倒臭いと思いながらも、私としても仕事として受けているCM動画だったので後でクライアントに「著作権法違反です」という督促状が来くるような事態は避けなければならない。
胸を張って堂々とCM動画をインターネットに流す為に、まずはJASRACに教えてもらった音楽出版社に連絡を取る事にした。

「デスペラード(Desperado)」という曲は2つの会社が権利を持っているそうで、ワー◯ー・チ◯ペ◯音◯出版(株)と、ユ◯バー◯ル・ミュー◯ック・ジ◯パンの2社らしい。私は早速ワー◯ーの方へ電話をかけてみた。
電話口でCM動画を製作中である事情を説明し、CMの担当者に代わってもらって改めて事情を説明した。CMの担当者がアメリカの本社に問い合わせてみるとの回答だったので、その日は電話を切った。ワー◯ーと云えばハリウッドでも1・2を争う大メジャーである。それなりの金額は要求されるだろうと覚悟をしていた…が、そんな私の“想定”していた金額など次の日の日にかかってきたワー◯ー・チ◯ペ◯音◯出版(株)のCM担当者からの電話で“貧乏日本人の感覚”である事が判明した…

CM担当者「本社から金額の知らせが来まして…」

私「はい。」

CM担当者「…大体ですが、年間、10万から20万ですね…」

私「あ、年間10万円ですか?…いや、思ってたよりも安いですね〜」

CM担当者「…あ、いえ、ドルです。」

私「は?」

CM担当者「…年間10万ドルから20万ドルです。」

…「クライアントに伝えます」と言って電話を切った私は目の前が真っ暗になる気がした…
10万ドルと云えば、日本円に換算して(ざっくりと)1000万円である…現実的とは云えない金額をクライアントの大和さんにどのように伝えるべきか暫し悩んでしまった。

事務所を出るとやけに美しい夕日が目に染みる気がした…


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